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 お久しぶりです、葉山です。
 7月に入って急に暑くなり、正直クーラーのリモコンが手放せません。
 拍手やコメントで温かいお言葉をくださっている皆様、本当にありがとうございます。来週までにはまたお返事が返せることかと思います。
 ではネタの神様が降臨なさったので、前回の「常識の問題」の続きをば。



 *** ***


「メル友になっちゃいました」

 ”Agnes Blanch”
 アドレスの一番上に燦然と輝く名前に、周囲は騒然となった。

「目を覚ましてくださいヒビキ!!」
「あの姉さんがここまで洗脳を……!?」
「薬か、催眠術か、いやマインドコントロールという手もあるか」
「手っ取り早く眠らせるぞ。後は任せる」
「私正気だから! 大丈夫だから真剣な顔で迫ってこないでリィ!」

 穏やかな週に一度のお茶会が、一気に混沌と化した。
 そんな自らの爆弾発言に気づいているのかいないのか、ヒビキはレモングラスとカモミールのハーブティーを飲み干してあっけらかんと笑う。

「いやね、アグネスも悪い子じゃないんだよ? ちょっと男が絡むと態度豹変したり、話題をさりげなくヴァンツァーの話に誘導したり、目を離した隙にスケジュールとかアドレス漁ろうとするだけで」
「それ、ちょっとの域か?」
「訴えたら勝てるぜ?」

 完全に王子様もとい獲物扱いされているヴァンツァーは、渋い顔をしながらクリームとベーコンのキッシュをエスプレッソで流し込む。
 しかし自業自得でもあるため、彼に関しては誰も同情したりはしない。むしろシェラなどは楽しそうな顔で生クリームがたっぷり乗ったザッハトルテを味わっている。

「んー、でもね、若さゆえの過ちかと思えば微笑ましいものだし。それに……」
「それに?」

 フルーツとプリンとチョコレートソースがこれでもかっとかかったパフェを攻略中であるレティシアが、ひょいと首をかしげてみせた。

「君ら(ファロット関係)のえげつない釣りに比べたら、あれくらい可愛いもんかなーと……」

 シェラがウバ茶を吹き出しかけた。
 その場の半数を占める死神一族は、そろって微妙な顔になった。余談だが、約一名は元死神の娘であるため、異様なほど死神関係の比率が多いお茶会でもあったりする。
 唯一まとも(?)な過去を持つリィが、ミートパイをつつくフォークを下ろして重々しく言った。

「あのなヒビキ。まず比べる相手が間違ってる」
「そう? 似たようなもんだと思うけど」

 ここで絶対違うと断言しない辺り、現存するファロットたちの仕事に向ける情熱は高くとも、一族愛は限りなく底辺に近い。

「だからね、流石にメルアドとか寮の部屋番号とか個人情報は流出しないけど、好きな物とか誕生日とか軽いネタはアグネスに教えてあげようかな、と」
「ちょっと待て!?」

 これにはヴァンツァーが食いついた。身の危険に直行するから当然だ。

「俺のプライバシーは、いや俺の平穏はどうなる!」
「女の子の恋路を手助けするのは世界の常識です。諦めて彼女の一人くらい作っとけば?」
「お前は、俺よりもあの女の友情を選ぶのか……っ!?」

 あなたは私と仕事のどっちが大切なの!?
 先日女性陣が大爆笑しながら観賞していた純愛三角メロドラマの台詞が、思わず脳裏に浮かんだ彼らは、思った以上に現代生活に馴染んでいるようであった。
 

 *** ***


 『可愛いは正義!』の国の血を引いているヒロインは、ヴァンツァーの扱いがけっこうひどいです。
 アグネス嬢好きなんですよね。他サイト様だとあんまり出番がありませんが、ああいう女の子はすんごく可愛いなーと思います(え)。
 文中に食べ物の表現がやたら多いのは、今この瞬間、葉山が飢えているからです。
 ご精読ありがとうございました。

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